【二十七章】 今日もまた、いつものように病室を訪ねて、彼に早く目覚めて欲しいと願うだけの時間になるのだと思っていた。穏やかに目を伏せる白い顔(かんばせ)を見つめながら、その向こうに見えていたはずの碧い瞳に思いを馳せるこ… 続きを読む 黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉗
投稿者: yukitake634
黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉖
【二十六章】 「……ここは、一体」 ぱちりと目が開いた。 不意に、目が覚めた。自然と意識が戻ってきた感覚。夢を見ていた記憶はないけれど、千冬はすぐに自身がどうやら長く眠っていた事を理解できた。それが一体どれくらいの長さで… 続きを読む 黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉖
黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉕
【二十五章】 白い部屋の中で一人、頭を垂れている。「千冬、頼む」 目を覚ましてくれ。戻ってきてくれ。願うのは、一体何度目だろうか。数えていられないくらい、同じことを祈り続ける。 このまま眠る彼を見つめ続けていたら、あの… 続きを読む 黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉕
黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉔
【二十四章】 敵の本拠地へ乗り込んだ場地の目標は番犬ではなかった。この組織のボスはきっとそれ以外の隊員がどうにかしてくれるだろうと考えている。場地の狙いは最初から黒猫で、彼だけを探して広い館内を駆け巡っていたのだ。 今… 続きを読む 黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉔
黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉓
【二十三章】 簡単に、はいそうですかと話が終わるならこれまでも苦労していないわけだから、予想はできていた反応だけれど。 黒猫の報告を聞いた番犬は、険しい顔をさらに濃くした。聞こえてきたのは、低い声色。感情を押し殺してい… 続きを読む 黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉓
黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉒
【二十二章】 「オイ、ソッチ、行けるか?」「ウス! 任せてください」 ああ、これもまた夢だと、場地は意識の底で理解していた。現実ではない出来事。今は眠りの中にいると、脳でははっきり認識していた。 だって何故か今の場地の隣… 続きを読む 黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉒
黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉑
【二十一章】 「……千冬」 ああ、とんでもない勘違いをしていたのだと気づかされた。 何より、最悪の過ちを犯したのだという事実に苛立ちが隠せない。「あいつ、許さねえ」 いや、勝手に信じたのは場地の方だ。十年という月日がどう… 続きを読む 黒猫は今宵壱等星の夢を見る㉑
鐘よ祝福を何度でも
「健やかなるときも、病めるときも、愛することを誓いますか?」 ステンドガラスから色が差し込んでいる。 その特徴的なガラスを通して、少しだけ冷たさを感じさせる色。それなのに、正体である光は柔らかく、暖かさを兼ね揃えていた。… 続きを読む 鐘よ祝福を何度でも
碧色の瞳に瑠璃を重ねて【シリーズ】
碧色の瞳に瑠璃を重ねて【二章】
「あー、終わったー」 建物から出て、周りに誰もいないのをいいことにもう一回独り言。 ひとまず課題に必要な資料は集め終わった。と、思う。 それで時間を見たら、入って一時間とちょっとくらいだった。これからどうしようかと考… 続きを読む 碧色の瞳に瑠璃を重ねて【二章】