ペットショップイフのおはなし④

ばじふゆ+とらが仲良くペットショップやってるおはなし。

とある特別な日の様子



「え! 二人で用意してくれたんですか!」


 ありがとうございます、少し照れながらはにかんでそう言う千冬は心の底から幸せそうで、思わず場地と一虎も笑顔になった。



 正直今日が晴れていて本当に良かったと思う。 
 といいつつ関東のこの時期は寒くても晴れている日が多いから、毎年十二月十九日は今日のようにカラッとした晴れ間が多いのを記憶しているのだけれど。


「あーさみぃ……」


 手袋を付けた手をダウンのポケットに仕舞って、ついでにぐるぐる巻きにしているマフラーへ顔まで埋めた。マスクもしているというのに、鼻先が冷たくて。場地は正直、冬が得意でない。
 尤もこれは寒さが苦手という意味であって、季節としては好ましいと思っているのだけれど。それは今日この日と関連していること。
 と思いつつ何が楽しくてこんな寒い日に出勤しないといけないんだと近頃は毎日思うけれど、出勤しないとかわいい犬猫に会うことができない。
 場地の仕事に対するやりがいは、そこだった。


(行くかー……)


 鍵はきちんと閉めたと思う。扉を開けた瞬間から寒くて頭が回っていないから、うっかり開けたままになっているかもしれないと、一瞬だけ不安になった。もし開けたままになっていたとしたら。あともう少しだけ夢の中にいるであろう同居人に怒られてしまうだろうけれど。それはまた別の話だ。
 職場はバイクで五分もかからない距離にある。歩いて行っても約十五分。近場にしたいけれど趣味のバイクに乗る機会はほどほどに持っておきたい、そう考えて今の部屋を借りている。
 同居人である千冬と出勤時間が被る時は後ろに彼を乗せていくのだけれど、今日は諸事情あっていつもより早く出勤したいのだ。後に来る千冬は歩きになってしまうので少々悪い気持ちにもなったけれど、考えてみれば最近は歩いていくことも多かったなと思い返す。
とにかくこの朝は時間が惜しい。


「あーさみぃ!」


 バイクはどうしても風を切る。
 走るに任せて思わず叫び声を上げてしまったが、きっと走行音に紛れてくれたと信じよう。もちろんかつてやんちゃをしていた時のように無理矢理吹かさせたりなんてしていないけれど。
 バイクを選んだのは自分だけれど、少し時間をかけて歩いて行った方が実はまだ寒くなかったのではないかと思いながら場地は職場へ急いだ。



「遅ぇよ、場地」
「うるせー、起こさないように大変だったんだわ」
「へーへー、お熱いことで!」
「んだよその顔」


 出勤は裏口から。入ってすぐの場所には事務室がある。
 場地が職場に来ると、同僚が先に来ていた。今日の早番は本来場地だけのはずだけれど、いろいろあって一虎にも朝早く出て貰ったのだ。その代わり、今度彼の早番を変わる約束になっている。とはいいながらXJランドのルール的には早番と遅番は実質一時間ほどしか変わらないのだけれど。要は、開店前の準備をするか店仕舞いをするかなのだ。少ない人数でこの勤務体制どうなのと一虎がいつだか千冬に文句を言っていた気がしたけれど、たしか言い負かされてたなと場地は思い返す。そのかわり週休二日は守られているから……という話はまたどこか別の機会に。
 場地は同居人もとい恋人を脳内に思い浮かべる。あと少ししたら彼の起床時間になるだろう。場地が出たときはまだ夢の中にいてくれていたようだったけれど、場地が布団から出た時の冷たい空気が彼を冷やして起こしてしまっていないかと少しだけ不安になった。今日は場地が先に出たからクーラーだけは付けているけれど。千冬が早出で場地の出勤が遅い日がまれにあるけれど、場地の場合は彼が出て行った後にぬくもりがなくなるのが寂しくてあと少し眠っていていいと分かっていても目を覚ましてしまうから。


「……場地、ヤベエ顔してるぞ」
「……もともとこの顔だワ。殺すゾ」


 恋人のことを思い出しているのが顔に出ていたのだろう。降ろしていた髪を結いながらユニフォームであるエプロンを身に付けようとしている一虎は、場地を見るなりそんなことを言ってきた。心底呆れているという声色だけれど、気心知れている相手だからすぐ軽口をたたきたくなるのだ。
 でも、いつまでも思考に耽っているわけにはいかない。今日の早番にはちゃんと意味があるのだ。場地は一呼吸すると、自身も身支度をぱっと整える。一虎と同じように寒いからと降ろしていた髪を後ろでひとまとめ。長い髪はつい動物のおもちゃにされがちだ。


「うし、はじめっか!」
「急ごうぜ、千冬来ちまう」


 なんだかんだ言いつつ心なしか一虎も楽しそうだったので場地は少し安心する。「千冬の誕生日、今年はサプライズしようぜ」提案したのは場地の方だったけれど、一虎だっておもしろそうだと思ってくれたのだった。千冬が場地に引っ付こうものなら家でやれと言ってくるわけだけれど、一虎だって彼の事は気に入っている。
 全く自分たちは一つ年下のこの店の主に弱い。


「コレさ、どっちに掛ける?」
「適当にそっちでいいんじゃね?」
「場地雑すぎ。……ハハ」
「んだよ」
「これさ、今日初見で入った人、なんか店間違えてたってなりそうだよな」
「ハ、いっそ店長バースデーパーティー!セール中! とか貼っとくかァ?」
「千冬に殺されッぞ」


 今日までの準備は本当に大変だった。彼に気づかれないように、今日この店に飾り付けをすべくその準備をしていたのだ。季節ごとに店内をアレンジするのはいつものことだけれど、この時期はどうしてもクリスマスの期間と重なる。荷物が増えていても逆に怪しまれなかったのは良かったけれど、さすがにHAPPY BIRTHDAYの文字を見られていたらサプライズにはならなかっただろう。
 ああでもないこうでもないと言いながら準備を進めていると、スマホの通知音が聞こえてきた。どうやら場地のようだ。ちらっと見ると千冬からの通知。お互いに出勤時間がずれるときは連絡を必ず送るようにしているから、今日も送ってくれたのだろう。そもそも、連絡が来ると分かっていてスマホをポケットに入れていたのだけれど。


「やべ、あと二十分くらいで千冬着くわ。これから出るっつってる」
「うわマジか、今日くらい遅刻して来いよ~」
「バジサンクーラー付けといてくれてありがとうございました、でも鍵開けっぱなしでしたよ。……うわ、やっぱり空いてたンか」
「L〇NE見る暇あるなら手ェ動かせ場地‼」
「わーってる……やべ、なんか絡まった」
「……オレさ、今気づいたんだけど千冬付く時間に空ける時間だったらどしよ」
「あ」


 肝心なところが抜けているのが何ともこの二人らしいところ。いつもの彼なら五分前位に到着しているけれど、どうだろうか。ちらっとスマートフォンを開いて時間を確かめる。開店まで三十分を切ったところ。恐らくは問題ないだろうけれど。さあどうか計画通りに動いてくれよと思いながらその手はルーチン通りに開店準備を進める。
 今日は忙しくなりそうだ。



 場地の予想通り、あれから約二十分。事務室側の鍵が開く音がして、先に一虎が千冬を出迎えた。開店まではあと五分という絶妙なタイミング。店の準備も整って、あとはブラインドを上げ、鍵を開けるだけという時だった。
 おはようもそこそこに一虎が奥に向かって叫ぶ。


「場地ー! 千冬来た!」
「え、なんですか。来ちゃ悪いみたいな言い方」
「早とちんなって。いーから。上着脱がなくていいから表」
「……なんスか、面貸せって話?」
「千冬ぅ、発想が物騒」
「場地さん! おはようございます」
「おー。はよ」
「ここでいちゃつくのやめてくんねぇ?」


 一虎に呼ばれた場地がゆらりと事務室に入ってくる。千冬が場地の方へ歩いてくるのを良いことに場地もそのまま彼へ近寄っていくと、外の寒さで上気した頬を右手でするりと撫でつけた。


「あ、サクラの餌変えといた」
「ありがとうございます。食ってくれるといいんすけどね」


 XJランドは犬猫専門のペットショップ。サクラというのは最近入れたばかりの仔猫のあだ名だった。お迎えしてもらった後に名前を付けてもらうまでの幼名という扱いで、仔猫には花の名前を、子犬には果物の名前を付けて呼んでいる。
 犬猫の中には小さい頃から少々食べ物の好き嫌いがある子もいて、サクラがあまり今の餌を食べないものだから、変えてみようという話を昨晩していたのだ。
 話が長くなりそうな予感を感じて、一虎が間に入る。別に良いけれど、今朝はやることがあるのだ。


「仕事の話はまたあとな。……場地」
「悪ぃ、一虎。千冬、コッチ」
「はい……?」


 上着もそのままでいいからひとまず表、つまりショップまで来いと言われて千冬は再度首を傾げる。といいつつも意外と察しの良い千冬のことだからなんだかいつもと様子の違う二人を見てすでにうすうす気づかれている可能性もあるけれど。こういうのは勢いが大事なのだ。
 そうして場地を先頭にして千冬、一虎の順にショップへ足を踏み入れると。


「千冬、誕生日おめでとう!」


 エプロンポケットに隠していたクラッカーを取り出して、二人一斉にパン! と鳴らした。


「ハハ、ありがとうございます」
「えー、そこはもっと反応してくれよ~」
「リアクション薄くてすいません。嬉しいですよ。すげえ、この飾りつけ今日やってくれたんですか? 昨日はなかったですもんね」
「おー、大変だったワ!」
「オレの為に、ありがとうございます!」
「千冬、今日はこれ付けてろよ」
「は? なにこれ……本日の主役? さすがに嫌です」


 『HAPPY BIRTHDAY CHIFUYU』の飾り付けがされている店内一角。丁度先週クリスマス時期に合わせた店内仕様に変えたばかりだから、ちょっとしたパーティー会場感があっておかしかった。そこに一虎が持ってきたおもちゃのたすきをかけたら本当にこれからホームパーティーでも始められそうだ。客にここは一体何の店だと思われるのではないだろうか。
 いくら何でもそれは恥ずかしすぎるので、お断りしたけれど。


「とりあえず、ありがとうございます。準備して来るんで、店開けてください」
「ドライなやつ!」


 一虎が何だかブーイングをしているけれど、千冬は場地に一礼するとエプロンを取りに事務室へ戻って行った。


「千冬のヤツ、あれは照れてンな」
「あれで……?」


 訝し気な一虎に対して、そう口にした場地の表情はとても柔らかかった。



 さて、一日はあっという間に過ぎて行った。
 もともと今日は引き取り日になっている子犬がいて、場地はずっとそわそわしたままだった。お迎えが決まってから引き取り当日まで時間が空く時はいつものことだけれど。今日で一旦お別れとわかっているから寂しいのだろう。
 いずれにしてもクリスマス目前。毎年ことながら、クリスマスプレゼントとして犬猫を欲しがる家族連れで良く賑わった。常連の中には店内の様子を見て祝いの声を掛けてくれる客もいたから、千冬的には少し恥ずかしかったのだけれど。XJランドは仲の良い三人で営業していることが地元で知られているから、微笑ましいと思われているのだろう。
 結局三人とも昼休憩さえそこそこに良く働いて、気づいたころの時間は閉店まであと三十分になっている。現在は午後七時二十五分ほど。


「あー疲れたー」
「お疲れ様です、場地さん、一虎君。今日は忙しかったですね」
「はぁ……リンゴ、また来てくんねえかな」
「いい家族でしたし来てくれるんじゃないですか」


 リンゴというのは本日四人家族に迎え入れられた柴犬のXJランドでの幼名。今日からはユメという名前になるらしい。今日まで二人の子どもが一生懸命考えていたのだと、一家の父親が話してくれた。家も近いみたいだし、おもちゃか何かを買いに来たついでに散歩で立ち寄ってほしいなと千冬は思う。
 そうやって一日の振り返りをしながら、今日はもういいかなという気持ちになってきた。こういう時に融通が利くところが個人で店を持っている良い点だったりする。昼も慌ただしかったしと、二人へのご褒美も兼ねて提案してみる。丁度一虎が仔猫の水を変えているところで、場地はおもちゃコーナーの陳列を整えているようだった。


「もうさすがにお客さん来ない気がするんで、今日は早仕舞いします?」
「あー、いや、もしかしたら駆け込みあるかもしんねえし」
「一虎君がそう言うなんて珍しいですね。いつもなら笑顔で真っ先にブラインド下す癖に」
「オイ、オレの評価どーなってるんだ?」
「日頃の行いっスねー」
「わー、パワハラ! 場地ィ、オタクの千冬サンどーゆー教育してるんですかァ?」
「それ言ったらオレが黙るとでも思ってんですか」


 千冬が一言余計なことを言って一虎が反応するのはいつもの事。同様に一虎が余計な事を言って千冬が反応することだって同じくらいある。つまりこんな掛け合いはいつもの事。場地はいつでもそんな二人を見て仲がいいなと思うのだった。今日もそのやりとりを耳にしながら、作業を中断すると千冬の方へ近寄って行った。そのまま彼の頭に右手を置く。すぐに一虎の目が座ったのが見えたが気にしない。


「わ! 場地さん」


 その黒髪の先を弄ぶと、少し頬を染めた千冬と目が合った。


「千冬ぅ、あと十分来なかったら閉めようぜ。それでいいだろ、一虎」
「……おう」
「別にいいですけど、場地さんまで珍しいですね」


 千冬にはなぜか良く分からないけれど、どうやら二人とももう少しだけ店を開けていたい理由があるらしい。いつもだいたい最後三十分は時間を持て余すのが約束になっているからそれでもいいなら構わないと思って、千冬は了承した。店を夜八時までの営業にしているのは、まれに駆け込みで常連客がペットフードを買いに来るからだ。忙しい日常を送りながら仕事終わりに家で待っている愛猫愛犬の為に餌を求めに来ることだってあるから開けているだけの話。


「じゃあ今日も片付けだけ始めちゃいましょう。飾り、ありがとうございました。……あ、片付ける前に写真撮っとこうかな」
「千冬ぅ、アレは最後な」
「へ? はい」


 喋ると同時に歩きだしたところでストップをかけられて、反射的に返事をした。
場地のことは何でもわかると思っている千冬だけれど、なぜ最後と言われたのかあまりよくわからない。忙しい中でせっかく準備してもらったのに片付けるなんて言ってしまったからがっかりされただろうかと少しだけ不安になる。
 そんな時だった。
 聞き覚えのある、ドアベルの音がしたのだ。条件反射でいらっしゃいませと言いながら入り口に目を向けると、どうやら客とは少し違った来店の様で首を傾げる。駆け込み客かと思ったが違うらしい。仕入れ時の配達員のような恰好をしている人物が入ってきた。今日届く荷物はもう何もないと思って、一体なんだろうと思う。


「XJランド様で間違いないですかね」
「あ、はい」


 千冬が不思議そうな顔を続ける横で、場地が入口へ向かって行った。どうやら心当たりがあったらしい。二、三言場地がやり取りをしてその人物はぺこりと頭を下げると出て行った。そうして再びドアが閉まるまで約一分ほど。あっという間の出来事に茫然としている千冬に、場地が笑いかける。


「店、閉めようぜ!」



「え! 二人で用意してくれたんですか!」


 そして話は冒頭に戻る。
 ありがとうございます、少し照れながらはにかんでそう言う千冬は心の底から幸せそうで、思わず場地と一虎も顔を見合わせて笑顔になった。
 ついでに作戦が成功した喜びをハイタッチに込める。
 場地が受け取った箱をさっそく事務室で開けると、そこにあったのは。


「わー、でっけえケーキ! すげえ! あざっス!」
「思ったよりもでけぇな! ウケる!」
「……このサイズ三人で食えますかね?」
「オレらで無理ならマイキー呼ぶワ」


 場地と一虎が閉店時間を気にしていたのは、店にバースデーケーキが届くように手配していたからだったらしい。確かに自宅ならまだしも、店を閉めてしまったら届けていいのかわからないだろう。
 張り切った場地は、せっかくなら一番大きい号数で! と何ともわかりやすい注文した。その店舗で一番大きかったのが六号ケーキだったからこれになったという。サプライズの嬉しさはもちろんあるが、うっかり八号とかじゃなくてよかった、男三人でこの量の甘物を食べきれるだろうかと一瞬心配になった千冬だったけれど、確かにご指名の彼であれば、ケーキあるけど来る? とでも尋ねればすぐに向かって来てくれるだろう。最近も相変わらずスイーツブッフェ巡りに目がないという話を親友かつ相棒から耳にしている。
 立派なホールケーキを見つめ、感慨深いというように千冬は零す。


「場地さん……今日は一日がかりで、何から何までありがとうございます……」
「おー。おめでとうな」


 本日の日付が変わった瞬間、彼が一番最初におめでとうを言ってくれて千冬は眠る前から幸せだった。そして始まった一日、朝の飾り付けにこうしてケーキのサプライズ。忙しかったけれど最高の誕生日だ。思わず泣きそうになった千冬へ一虎がオレも手伝ったんだけど? と告げてくる。せっかくだからとピースサインを決めて見せた。


「一虎君もあざっす!」
「雑かよ!」


 相変わらずのやり取りだけれど、気持ちは伝わっているのだろう。店内に笑い声が溢れる。


「よし、千冬、それ持ってあっち行くぞ」
「あ、はい!」


 場地の片手にはスマホ。千冬へ向けているところから見ると、写真を撮ってくれるらしい。間違っても落とさないようにとしっかり両手に持って、再び表に戻る。今さっきのやり取りが嘘のように一虎がいちいち足元を気にして千冬を誘導してくれるものだから場地には面白かった。
そしてその甲斐甲斐しい案内のもと、千冬は『HAPPY BIRTHDAY CHIFUYU』の文字の前に立つのだった。


「撮んぞー、はいチー……オイ一虎ァ、邪魔すんな」
「サーセンしたー」


 シャッターを切ろうとした瞬間を狙ってカメラ前に指を突き出してきた一虎に場地がジトッとした目を向ける。いたずらを咎められた一虎だったけれど、口だけ形ばかりの謝罪をしたわりには反省の色なんて見せずにわざとらしく犬猫のケージの方へ向かって行く。そのやりとりがあまりにも子供じみていたから面白くて、思わず破顔したところを狙ってシャッター音が響いた。


「ハハ、いい表情してんじゃん」
「変な顔してません?」
「やっぱオマエカワイイな」
「や……めてください、急に」
「真っ赤。ケーキ落とすなよ」
「あー! あー! 聞こえねえな! なあ千冬、場地、食おうぜー!」
「一虎君、うるさいです」
「理不尽!」


 もはや悲鳴の様な一虎の発言に、場地は八重歯を見せながら大笑いした。


「千冬、オレ持つワ」
「あ、ハイ。……場地さん、一虎君、本当にありがとうございました!」


 じゃ、片付け後にして食いましょう、千冬が告げるとオウと揃った返事が戻ってくる。
さて、本当に食べきれるだろうか。わざと無理だと言って知り合いたちを呼んでもらうのもいいかもしれないなと千冬は思うのだった。


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